線香花火【企・短】


「はぁ~バケツもぅイッパイ」



片隅に置いていた小さな赤いバケツの中は、ぎゅうぎゅうに2セット分の花火の残骸が突き刺さってる。



「あとコレだけだよ。」


「線香花火…。」



レイの手にはセットにそれぞれ2束づつ入っていた線香花火が4束


コレが全部燃え尽きたらもぅ終わり



「ナナミここ座って。」



レイが手で砂を払ったコンクリートの階段に2人並んで座る。


さっきまで花火の音と火薬の匂いで遮られていた潮の匂いと波の音が私達を包んだ


一気に現実に引き戻されたみたいで、また少し淋しくなる



レイに渡された線香花火の上の端を指で摘み

2人で2本同時に火をつけた



導火線の先に火が灯りその火はやがて小さな玉になる


シュッシュッ…


音をたてて小さな火花を飛ばせる線香花火

その一生懸命な姿がかわいらしい



2人共自分の持つ線香花火を食い入る様に、ジッと息を殺して見守る


小さな玉はやがて膨らみを増して中に蓄えたエネルギーをキレイに散る花びらの様に火だねの外へと吐き出していく
ひとつづつ ひとつづつ

ていねいに

優しく


でも力強く



見とれているうちに火だねが見えなくなるほど綺麗な花を満開にさせていく




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