白×黒
「ねえ、取り敢えず動いた方が良くない? 黒はもう動き始めてるし」
美加が黒を指差して言った。確かに人が疎らになり始めている。
大吾は少し考え込んだが、決意したように言った。
「よし、動こう。携帯持っている奴はいるか?」
大吾は自分の携帯電話を取り出して言った。
私、美加、日奈子。そして真綾、夏目、京、浩介、麗が手を挙げた。
「じゃあ携帯を持っていない奴はあまり単独行動は控えてくれ。一人になって黒に殺られたら困る」
「チッ……んだよ大吾の奴……。一人で張り切りやがって……」
面倒臭いのか、浩介がそう愚痴を零した。大吾は聞いていない振りをしていた。
「取り敢えずさぁ、食料と武器はちゃんと取っといた方が良くない? 下手すると殺されちゃうよ」
責任感の強い真綾が皆にそう切り出した。
大吾は「そうだな……」と呟き、真綾と何か話し始めた。きっと女子のリーダーは真綾になるのだろう。
「ねえ、和音……」
不意に、日奈子が私の服の袖を引っ張った。私は耳を傾ける。
「ねえ、私怖いよ……。昨日まで、昨日まで皆仲間だったんだよ……? 昨日まで、あんなに仲良かったじゃない……。一緒に勉強してたじゃない、クラス全員でカラオケにも行ったじゃない……。ねえ……なんで……?」
そう涙を流す日奈子に、私は声を掛けられなかった。
ただ、私は日奈子をずっと抱き締めていた。