白×黒

【麗side】


元々柔道は強い方だったけど、本物の闘いで使った事は無い。
俺の闘い方が何処まで通用するか分かんねぇけど……。取り敢えず女子は守んねぇとなぁ。後で大吾と海斗になんて言われるか分かんねぇし。

「麗」

不意に名前を呼ばれた。
振り返ると愛が立っていた。俺は首を傾げる。

「ん? どした?」
「あ、あのさ。実はあたしも空手習ってんだぁ。あたしも力になれるかもしれないし、宜しくね?」

愛は少し遠慮がちにそう言った。
……へえ。空手習ってるんだ。やるじゃん。俺はそう思い、愛の頭を撫でて「そか。サンキューな」と笑ってみせた。

「麗、さっさと行こ。食料盗られちゃうよ?」
「え? お、おう」

突然、美加が俺の服の袖を引っ張った。
俺は少しよろけそうになる。全く、美加といい和音といい、なんでこんな乱暴に人の服引っ張んだよ……。

なんとか持ち直した俺の前に、突如『家庭科室』と書かれた扉が立ち塞がってた。
あ……なんだ、着いてたのか。てか中に誰も居る気配ねぇし。

俺は「お邪魔しまーす」と堂々と扉を開けて中に入って行った。
後ろから女子達も少し途惑いながら俺の後を着いて来た。

中には案の定、誰も居なかった。良し。
俺は女子に指示をした。

「うし。じゃあ皆適当に食料探して。俺見張りしてる」

真綾を中心に、女子は一斉に食料を探し始めた。
俺はかったるそうに家庭科室の扉によさりかかっていた。

そんな俺の目に、或る物が飛び込んで来た。
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