白×黒

【美沙side】


「もう嫌……なんで私がこんな……」

私は家庭科室に着いても、ずっと隅の方で蹲っているだけだった。
周りには愛が居てくれて私をあやしてくれているけれど、私は凄く怖かった。

怖い。恐怖。殺す。殺さなければ殺される。

「なんで美沙はそこまで怖がるの? 男子が守ってくれるよ」
「違うもん……。美沙が怖いのはそんなんじゃないもん……」
「……じゃあ何!? 何がそんなに不満なの!?」

愛は少しイラついたようにそう怒鳴った。
幸い周りには聞こえない程度の声だったので私達二人以外の女子は全員食料探しをしている。

私は頭を抱えたまま言った。

「……だって……。だって龍が……。龍が黒に行っちゃったんだよ……?」

そうなのだ。
私は黒に行ってしまった山本龍と付き合っていたのだ。
大好き。愛してる。ずっと一緒だよ。
毎日毎日、その約束をして、手を繋いでいたのに……。

愛は私の気持ちに気付いたのか、「ごめん……」と呟いた。
私は顔を左右に振り、「こっちこそごめんね……」と言った。

龍……無事だよね? 大丈夫だよね?
私はただ、神様にそう祈るしか無かった。
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