白×黒
「……兎に角体育館へ行こう。そこで目的が分かるかもしれない」
美加のその冷静な判断にあたしも賛成した。
そしておどけた足元で皆の後を着いて行った。
第一体育館は静まり返っていた。
静かな体育館内に私達の足音だけが響いていてヤケに気味が悪かった。
ふと、体育館へ一歩足を踏み出した途端、クラスで結構仲の良い奈々が言った。
「……あれ? 私……何してたの?」
私と美加はその言葉に息を呑み、皆の方を見た。
見ればクラス全員が体育館へ入って直ぐ「なんで此処に居る?」「何故か今さっきまでの記憶が無い」等口々に言っていた。
――体育館へ入った途端、催眠や洗脳が溶けた……? と、言う事はあたしと美加の予想通り、皆教室へ居た時に何かされたのだ。
するとその途端、体育館のステージの上でこつこつと足音が聞こえた。
皆ステージへ振り返る。そこにはなんとあたし達のクラスの先生が何食わぬ顔で立っていた。ステージの前には32席のパイプ椅子が置かれてあり、先生はあたし達の方を見て言った。
「そんな入口で立ってないで、椅子に出席番号順に座りなさい」
先生は可笑しい。
あたしはそう悟った。先生はさっきの放送を知っている筈だ。なのに何故そんな冷静で居られる? まさか先生も犯人に洗脳でもされているのだろうか……。だったら素直に席に着いた方が良い。下手に逆らったら今の先生は自我を持っていないなら襲い掛かって来るかもしれない。
あたしは自分の出席番号の椅子に座った。皆もあたしの意図を感じ取ってそれぞれ席に着いた。皆重苦しい表情だった。
先生は全員が椅子に座ったのを確認すると、無表情のまま出席簿を開いた。
「出席を取ります」
悪夢の始まりだった。