神隠し
ところがその子供はいくら捜しても見つからなかった。

大地主は絶望し、家を捨て、町を出てしまった。

それ以後、その家には誰も住んでいないはずなのに、時折灯りがついたり、人の声が聞こえるという。

その家とは、くしくも今からアタシ達が行こうとしている屋敷だった。

男性は話し終えた後、あの屋敷に入ろうとした人が次々と行方不明になっていると言った。

だからアタシ達に、近付かない方が良いのだと…。

仲間達は少し暗い気分になったものの、すぐにお会計を済ませて店を出た。

さすがに不安になったのか、仲間の1人が行くのを止めるかと聞いてきた。

しかし言いだしっぺの彼が、意地になって行くと言った。

その気迫に押されて、アタシ達は再び歩き出した。

―あの屋敷を目指して。
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