君の手が奏でた夢
廊下の隅まで歩いて
人に見られないように
こっそり涙を拭いた。
なんで涙なんか
流しちゃったんだろう。
どんな風に
説明したらいいんだろう。
まだ弱まったままの
脆い涙腺を押さえて
ぼうっと宙を見ていると
「平気か?」って
優しい声。
振り向くとやっぱり
音羽クンがいて
「どうしたんだよ?」
「何か気に障った…?」
そんな風に言いながら
背中をさすってくれた。
また
泣いてしまいそうで…。
それを
一生懸命堪える。
「ありがとう…」
そう告げたとき
堪えていた力が緩んで
やっぱり少し
泣いてしまった。