君の手が奏でた夢
 
だけどやっぱり


「アイツ本当に冷たくて」
「ライブも見にこねーんだ」


音羽クンから
彼女の事を聞くときだけは

唇を噛むように
複雑な笑顔を作ってしまう。

彼が可愛い彼女の事を

「アイツ」って

そう呼ぶたびに

胸の中の秘密の想いが
暴れだしそうになる。





「雲雀はちゃんと来いよ?」


「ぁ…うん…」


覚悟したはずの
複雑な想いは

どんどん縺れ出して

私を苦しめるように
喉元に絡みつく。





そんな苦しい片思いが
終わるきっかけになったのは

彼に訪れた
ひとつの不幸だった。


 
< 21 / 46 >

この作品をシェア

pagetop