君の手が奏でた夢
 
待ち合わせ場所の
駅前の歩道橋につくと

その中央で
彼は少し俯いて

鉄筋の柵に
力無くもたれていた。


「音羽クン…!」


振り返った表情には
泣き顔の面影があって

だけど彼は
私の顔を見つけると

いつもの優しい目で
力なく微笑んだ。





「本当に来てくれたんだ」
「ありがとう」


「一体どうしたの…?」
「何かあったんでしょ?」


よく見ると
音羽クンは制服を着ている。

傍らには
鞄も落ちている。

学校へは
行くつもりだったんだ。

休んだ理由は
ライブの練習じゃない。

息を飲んで
彼の目を見つめる。

 
< 25 / 46 >

この作品をシェア

pagetop