君の手が奏でた夢
彼は歩道橋の下に広がる
大通りを眺めながら
ゆっくりと
その口を開いた。
「俺さ、フラれちった」
「え…っ」
すぐに
あの可愛い女の子の顔が
私の頭に浮かび上がる。
「俺と付き合うの」
「面倒になったんだって」
「…もう大分前から」
「俺って惚れっぽくて」
「すぐ好きになって」
「すぐ飽きちゃって」
「ろくな付き合いなんて」
「全然してなかったけど」
「アイツだけは」
「本気で好きだったんだ」
「ずっと…」
そこまで話して
彼は髪をぐしゃぐしゃかいた。
「あーぁ。何言ってんだ俺」
「…ダサいね」
そう言って笑ってみせる目は
やっぱり赤かった。