君の手が奏でた夢
顔を上げてからは
急に恥ずかしさが走って
お互い目も上手く
合わせられなかった。
「ありがとう」
空気を断ち切るように
言葉を発したのは彼の方。
「おかげで少し…」
「すっきりしたかも」
「よかった」
「私なんかの胸なら」
「いつだって貸すから」
笑いながら言ったけど
冗談のつもりはなかった。
「そんなに」
「フラれてばっかでたまるかよ」
音羽クンは目を反らしながら
拗ねるようにそう答える。
「明日は学校行くから」
「うん、待ってる」
家の方向が違う私達は
手を振って反対の階段へ向かう。
一人になってから胸が
酷く熱いことに気付いた。