君の手が奏でた夢

4. memories

 
「おはよう」


翌日の彼は
いつもの表情だった。

教室に入って一番に
私の席まで来てくれる。


「おはよう」
「待ってたよ」


「ありがと」


彼は目を反らして
ぶっきらぼうにそう返す。

だけどその口もとが
柔らかな笑みを見せていて


私は

(よかった)と

心の中でそう思った。





「あのさ!」


音羽クンは急に向き直り
少し長い前髪を触りながら
言い辛そうに私を見る。


「どうしたの?」


「タイミング悪いけど」
「明日から練習で休むんだ」


「そうなんだ…」
「出席平気なの?」


「多分ね」


苦笑いをする彼の表情は
少し幼く見える。

また胸が、どきんと鳴る。

 
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