君の手が奏でた夢
 
「じゃあ今度ノート見せるね」
「練習がんばって!」


「ん!」
「雲雀が見に来る初ライブだし」
「気合入れるよ」
「ダサいトコだけじゃなくて」
「いいとこも見せなきゃな…」


その言葉に
昨日の出来事を思い出す。

歩道橋の真ん中で
彼の涙を抱いたこと――。

頬が熱い気がして
とっさに頬杖をついた。

2人とも目を反らして
黙ったままでいると

不意にチャイムが鳴って
担任が黒板の前に立つ。

音羽クンも「じゃあ」と言って
自分の席へと戻っていった。





どくん。どくん。どくん。

はっきりと聞こえる
血液を押し出す心臓の音。

昨日暴れだした恋心は
いまも暴れ続けているみたいだ。

授業が始まっても
私は冷静になれなかった。

 
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