君の手が奏でた夢
だってそうだ。
音羽クンにはいま彼女がいない。
この勝手な恋心が
暴れてしまう気持ちも分かる。
だけど――
彼はあんなに苦しんで
あんなに泣いていたのに
それを喜ぶなんて
私、軽薄過ぎるよ…。
頭では分かっているし
心だって
音羽クンの涙を思い出すだけで
張り裂けそうに辛い。
なのに胸の奥の心音は
どんどん音量を増していく。
どくん。
どくん。
どくん。
煩い音の響く胸を
必死に両手で抑えた。
(暴れちゃだめ)
(暴れちゃだめ)
(彼のコトが…本当に好きなら)
そう言い聞かせると
暴れん坊の胸も
少しずつその音を弱めた。