君の手が奏でた夢
私は音羽クンがすき。
そして、彼の笑顔がすき。
だから
彼の傷を、痛みを、
少しでも減らしてあげたい。
休憩時間の度に
それとなく彼の表情を見る。
音羽クンの笑顔は
いつもと変わらない。
だけど何か
私は違和感を感じていた。
放課後になって
皆が席を立つのに。
彼は一人机に伏せて
寂しそうに携帯を見ている。
「帰らないのー?」
気になって
その顔を覗き込んでみた。
休憩時間と違って
彼の目は虚ろな色をしている。
「そんな心配すんなよ」
「もうなんともない」
朝より低い声。
やっぱり様子がおかしい。
「でも…」
「でも何?」
「雲雀には関係ないだろ…っ!」
初めて聞いた大声に
私の体はビクッと撥ねた。