君の手が奏でた夢
 
拒絶されてる。

音羽クンに拒絶されてる。


でも――





彼は攻撃的な目で
私を睨んだ。

いつも優しかった口元は
硬く閉じられている。

もう立ち去るべきなのか
頭の中で悩んだ。


だけど

彼の鋭い目の奥に
彼の荒げた声の中に

痛々しく膿んだ
真新しい傷が見えて

どうしても

触れたいと思ったんだ。





おかしいって
言われるかもしれないけど

触れて欲しくないから
彼が私を拒絶してるのも

分かってるけど…



それでも私は
彼の隠した傷に触れたい。

そして
あなたの痛みを知りたい。


どのくらいの大きさで
どのくらいの深さで

どれほど痛んで
どうすれば治るのか

ちゃんと知って


もしも消えない傷なら

その痛みを少しでも
和らげたい。

だから――

 
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