君の手が奏でた夢
 
「俺って女々しいのかな」


苦笑いをしながら
音羽クンはそうつぶやく。


「女々しいのなんか」
「嫌なのにさ」
「引きずることばっかで」
「上手く笑えねー…」


苦笑いをしたままの目は
少しだけ潤んでいた。





「大丈夫だよ」
「女々しくなんかない」


「…そうかな」


節目がちな瞳は不安そうに
もう一度携帯を見つめた。


「音羽クンは気にしてるけど」
「思い出もすぐ忘れて」
「ひとつの恋が終わったのに」
「けらけら笑ってる人の方が」
「私はいやだな…」


「………」


「音羽クンが」
「上手に笑えないのは」
「ひとつひとつの出来事を」
「大事に思ってる証拠だよ」
「私はそうやって」
「いろんな出来事を」
「大切にする人の方が」
「素敵だと思う」


言い切ると音羽クンが
あの優しい眼差しで
くすり、と笑った。


 
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