君の手が奏でた夢
 
「音羽クンかっこいいよね」



友達の間では
すぐに彼が話題になった。

「詩花もそう思うでしょ」

そんな風に聞かれると

「うん」

としか答えようがない。




だって、逆らえないほど

きらきら輝くその存在感に
目を奪われてしまう。

だけどその時は
それだけだった。





「どうして始めに…」
「2週間も学校休んでたの?」


「詩花知らないの?」
「音羽クンはバンドやってて」
「音楽が忙しいときは」
「学校すぐ休んじゃうんだよ」


「ふぅん…」


「結構人気あるバンドだよ」


「そうなんだぁ」


「詩花、興味ないの?」
「プチ芸能人だよー!」




だって

そんな遠い存在に
興味持ったって

なんの意味もないじゃん。


私は

その他大勢の部類だもん。




その時は
そう思っていたのに。

 
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