君の手が奏でた夢
 
なんで

大きな声で
歌っちゃったんだろう。

歌いやすくてつい…。





そんな風に
席で俯いてた時だった。

私の机の前で
黒い制服が立ち止まる。

顔を上げると
そこには話したこともない

音羽 奏馬クンがいて――。





「歌、すげー上手いね」


「ぇ…っ」





それが

初めての会話。



「何か音楽してんの?」


「ぅ、ううん…!」
「わたし…楽譜も…」
「ろくに読めない…から…」


しどろもどろになりながら
そんな風に答えたら

彼は鋭い目を細めて

くすって、笑った。

 
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