―優等生乱用
「俺の子」
言葉を失う。
うずくまっていた体で
ギュッと枕を抱き締める。
「お姉さんは出産する気なんだ」
つまり父親の秋は嫌でもその人を支えなきゃいけないのね?
そんなの秋の望みじゃないならほっとけばいいのに。
でも、私は知ってる。
秋のことを知り尽した私なら知ってる。
秋は優しい人だ。
「じゃあ愛人のままでいようよ」
秋はフフッと笑う声で返す。
きっと電話の向こう側は困った顔なんだろう。
「ずっとこのままでいようよ」
ただのわがままだ。
「そしたらゆんが幸せにならない」
「私はあっちゃんがいれば幸せだよ」
「ありがと」
沈黙が続いた。
いつもの電話じゃ有り得なかった沈黙。
喋ったら終わりそうで
壊れてしまいそうで
一粒一粒流れてくる涙は正直者だ。