猫又は夜に鳴く
「まぁ賢二君、大分立派になって」
居間の畳に腰を下ろした彼に、祖母がご機嫌に声を掛けた。
「今日は歩きだろ?ちょっと飲んでくか?」
父はそう言って日本酒の酒瓶に手を掛けるが、それを鬼の様な形相の母に取り上げられる。
「お父さん!!こんな真昼間から止めてください!!」
母の怒声に父が肩を竦めて見せると、父は彼と顔を合わせてクスクスと笑った。
彼とは高校時代から付き合っていたので、私の家族とはすでに仲が良かった。
一緒に海やバーベキューに出かけた事もあるし、休日に家に遊びに来る事もよくあった。
……彼には家族が居ない。
私と彼が二十歳の時、彼の両親とお兄さんは事故で亡くなった。
そんな事を考えていると、目の前のテーブルにコトンと湯のみが置かれる。