猫又は夜に鳴く
「ありがとうございます」
彼が母に向かってまた頭を下げた。
「いいのよ~。賢二君はうちの家族みたいなものなんだから。……それにこれからは私の息子になるのよ」
そう言って母は少し興奮したように頬を赤らめ、ニッコリと笑って見せた。
「賢二君、本当にこんな子でいいのか?後で後悔してもおそいぞ~?」
父が私を見ながら冗談っぽく笑った。
「はい。彩乃さんは僕にとって大切な人ですから。彼女以外の女性は考えられません」
そう言って彼は優しく笑って私を見た。
彼のその答えに皆がしみじみと深く頷き、ニヤニヤとムカつく笑みを浮かべる。
「よかったわね~彩乃。こんな素敵な人が旦那さんになるなんて羨ましいわ~」
母はお茶を運んできたお盆を小脇に抱えたまま、赤い頬を押さえて笑った。