忘却の勇者

元々王国を陰から支える組織だが、現在はこの国の政治に介入。


議会の否決権を唯一保有し、実質的に王国の実権を握っている。


一人で小国を一つ潰せるといわれる四聖官。


彼らの力は世界中に知れ渡り、今や魔王に匹敵する唯一の対抗勢力とも言われている。


そんな生きた伝説とまで呼ばれる四聖官の一人、イアン賢者の生まれ故郷であるジャンケの街では、イアン賢者四聖官就任40周年記念祭の準備がちゃくちゃくと進められていた。


魔王が力を取り戻しているというのに、街の人たちの頭の中はお祭り一色。


まるで他人事のように、記念祭を待ちわびている。


この街が世界で一番安全だという証拠であろう。四聖官の力の絶大具合が良くわかる。


記念祭まで残り一週間。


石造りの建物が並ぶ街のメインストリートに佇む一軒の魔法道具屋。


まだ朝日が昇って間もないという早朝に、一人の少女は箒を片手に店の掃除をしていた。


肩甲骨まで伸びた桃色の髪を一本に結わえて、熱心に掃除をする彼女の名はマリ。


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