忘却の勇者
相変わらず笑顔でこちらに向かい、あっという間にコーズの隣に付いてきた。
背中にいるシキに気がつくと、悠長にも挨拶を交わした。
「あっ、目が覚めたんですね。僕はオレオです」
「あ……嗚呼、私はシキ。王国の騎士団の将軍だ」
「その若さで? 凄いですね」
生命の危機に立たされているのに、なにを和やかに会話しているんだこいつ等は。
コーズは一喝してやりたい気持ちで一杯だが、人一人担いだ状態で全力疾走しているため大声が出せない。
オレオを叱るのは後にして、まずは後ろで異様なまでのプレッシャーを放つ魔物をなんとかしなくては。
ポーチに手を伸ばし、ある物を取りだす。
手のひらに収まる丸みを帯びた金属の固まり。
閃光弾。しかも対魔物用の強力なやつ。
口で安全ピンを解除すると巨大な魔物、コーズが勝手に命名した大魔獣ベモスの顔面目がけて投げつけた。