忘却の勇者
悔しさに目をつぶる。
この状況を打破する手段は、ない―――
砂漠に轟く轟音。
岩陰に隠れていたシキは顔だけ覗かせて様子を見る。
その光景に絶句した。
ベモスほどの巨大な白銀の剣が奴の首を刎ね、首の動脈から体液が噴水のように噴出し、白銀の剣は血の色に染まり、辺りは血のオアシスと化している。
赤黒い湖に浮かぶのは、ベモスの頭部。
耐えがたい光景。だがシキが絶句したのは、巨大な剣でもベモスの変わり果てた姿でもない。
ベモスの足元にいる黒いローブを纏った人物。
漆黒のローブに金糸で刺繍された、十字架を掴むドラゴンの爪。