忘却の勇者

竜巻の根元に展開された魔法陣によって、異空間へ転送されたのだ。


後に残ったのは、見渡す限り岩肌の橙色の世界。


砂漠は消えた。砂漠特有の細かな粒子は、もうどこにも見当たらない。


サイは指を鳴らす。


彼の目の前にまた魔法陣が現れ発光すると、オレオとコーズが突如現れた。


なにが起こったのか二人は分からない。


大爆発の直前に、サイが二人を異空間に飛ばしたのだが、その時の記憶も飛んでしまったようだ。


彼らの目に映るのは、変わり果てた世界のみ。


「無事のようだな」


低い抑揚のない声が二人にかかる。


二人はサイの声で我に帰り、頭を縦に振った。


この人が、歴代四聖官の中でも最強と謳われるサイ賢者……。
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