忘却の勇者
「魔王のことでお話を伺いたいのです。魔王軍と直接対峙したサイ賢者様なら、なにか討伐方法をご存知ではないかと思いまして」
本題に入る。
魔王という単語が出た瞬間、サイの肩がピクリと反応して上下した。
まるで当時のことを思い出すかのように、手を口元に当てて物思いにふける。
時間にして数秒のことだったが、オレオとコーズには何時間にも感じられた。
この人の問いによって、自分たちの運命が大きく変わるかも知れぬのだから当然であろう。
乾いた風が頬を打ち付ける。
オレオは顔だけを上に向け、ジッとサイの回答を待った。
「……古代の神話は知っているか」
サイの口から飛び出したのは、オレオが望んでいたものとは異なっていた。
「神話、ですか?」
思わず聞き返してしまったが、サイは黙って頷く。