忘却の勇者
オレオは必死で子供のとき言い聞かされた神話を記憶の底から引きずり出した。
「確か……一本の聖剣と九十九冊の禁書によって、魔王を封印したとかなんとか……」
曖昧な記憶であったが、的を得た回答であった。
今から何千年前の太古の時代、魔王と魔王の配下である魔物達があらゆる国に攻め入り、暴虐武人の限りをつくしていた。
当時の人々は魔物と戦う術を持たず、ただただ恐怖に怯え暮らしていた。
そんな時、天空から一人の賢者が舞い降りた。
賢者は魔王と魔物に対抗すべく、九十九の魔法書(後に禁書と呼ばれる)を作り、魔術の素質がある者達にそれを託し。
そして賢者は九十九の禁書を元に、一本の聖剣を作り上げた。
禁書と聖剣により魔王を封印し、世界に平和が戻った……というのが現代までに語り継がれた神話である。
だがそれがどうしたというのだろうか。
不思議に思うオレオだが、サイは二の句を続ける。