忘却の勇者
彼等もこの町にしかない魔具を求めてやってきたのであろう。それほどここの魔具は貴重なのだ。
カウンターに座りオレンジジュースを口にする。
酒場にいる子供はオレオだけ。
子連れの親子などが店に立ち寄ったりはするが、子供が一人でいるのは物珍しいのだろう。
カウンターを挟んで、店の従業員である中年のふくよかな女性がオレオに話をかけた。
「お客さん見ない顔だね。旅の人かい?」
「そんな所かな」
愛想の良い店員に、オレオも笑いかけて答えた。
「へぇ、こんなご時世に旅とは随分度胸があるねぇ。まあ、ここにいる客の半分くらいは、この町でしか手に入らない魔具目当ての旅人なんだけどね」
「やっぱりそうなんですね。そうだ、ここから東にある岬に“東の賢者”と呼ばれる人がいるみたいなんですけどご存知ですか?」
「東の賢者?」