忘却の勇者

まさに宝の山。それが通常価格よりも割安で手に入るのだから、マニアには堪らない光景であろう。


ついつい財布の紐が緩みがちになるが、それでもコーズはしっかりと品定めをして必要最低限の物しか購入しなかった。


家庭的な一面が、財布の紐をキツク結んでいるようだ。義賊でありながら金銭感覚は鋭い人物だ。


お目当ての魔具を三つほど購入した。


吟味に吟味したがいがあり、非常に良い買い物をしたようだ。


財布の紐はキツクとも、コーズの口元は緩んでいる。


ポーチに収め、後は旅の必需品を補充しようと考えていると、近くに人だかりが出来ているのを発見した。


何事かと思い様子を伺うと、なにやら客と店の主人が揉めているようであった。


「なにが半永久的に使えるよ。一回ぽっきりの消耗品をこんな高値で売りさばくなんてありえないわ!」


どうやら粗悪品の魔具を掴まされたようだ。


白いマントを羽織り、桃色の髪を後ろで一本に結わえた少女は、店先に並ぶ魔具を指差し猛烈に批判する。
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