忘却の勇者
こんなの魔具の風上にも置けないやら、これなら素人が作ったほうがまだマシだやら、怒り心頭といった感じだ。
さすがにここまで言われて大人しくしている人などいないだろう。
店の主人らしい男は、少女が散々罵倒した杖状の魔具を手にすると、先端を少女に向けた。
魔力が注ぎ込まれ、杖は淡い空色に輝き始める。
「そこまで言うなら、譲ちゃんの身体にこの魔具の力を味わえせてやるよ!」
仮に粗悪品だとしても魔具は魔具。こんな至近距離で生身で受けたら命にかかわる。
コーズは足のベルトに手を伸ばす。
男の腕目がけてナイフを投げつけようとしたが、魔具の発動の方が早かった。
杖の先端から空色の稲妻が迸る。
危ない!
コーズは思わず目を瞑った。
バチバチッという音が耳に残る。