忘却の勇者

恐る恐る瞼を開けると、想像していた光景とは大分違っていた。


倒れていたのは少女ではなく男。


少女は何事もなかったかのように、倒れた男を見下ろしている。


「やっぱり不良品じゃない」


高らかに言い返す。気を失った男の耳に届いたかどうかはわからぬが、少女は満足げな表情をしていた。


なにがあったのか。コーズは少女に視線を凝らす。


すると彼女の周りの空間が、僅かだが歪んでいるのを発見した。


透明な結界魔法である。これによって男の攻撃を弾いたのだ。


いつから結界を張っていたのだろうか。コーズは全く気がつかなかった。


案外只者ではないかもしれない。


一悶着も解決したようなのでオレオと合流しよう。


コーズは踵を返すが、すぐに向き直す羽目になった。
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