忘却の勇者
良質な魔法石は扱いが難しく、魔力の消耗も激しい。
それを幾つも所有している所を見ても、マリの魔力が人並みはなれたものであると考えられる。
それでもつい先日、人並みどころか神の領域にまで達した魔力を感じた分、それほど驚きはしなかったのだが。
飲み物が運ばれる。マリはアップルジュースにコーズはアイスコーヒー。
アルコールを嗜みには少々時間が早すぎるので、ソフトドリンクを頼んだ。
互いに一口だけ飲み、コーズはマリの魔具を掴んでマジマジと見つめていた。
「魔具に興味があるんですか? もしかしてコレクターとか」
「興味はあるけどコレクターじゃねえよ。俺も連れと旅をしててな。長旅には魔具が必要不可欠だから、どうしても興味が出ちまうのさ」
「へぇ~コーズさんもですか。どんな人なんですか?」
「うーん。一言で表すならチビ? ほら、ちょうどあそこのカウンターにいるガキぐらいで……」
視界の隅に移りこんだカウンターに座る黒尽くめの少年の姿。