忘却の勇者

招いたはいいが、とてもじゃないが人をもてなす気力がない。


すぐに椅子に座りと、テーブルに突っ伏した。


二日酔いでダウン寸前のコーズの代わりに、マリがコーヒーを挽きたてる。


ガンガン内側からド突かれる痛みに顔をしかめるコーズに、マリはクスクスと微笑を浮かべた。


「オレオどこに行ったのかしらね。案外誘拐されてたりして」


「誘拐? ないない。それはない」


あんな化物クラスの人間が、拉致られるわけがない。


ヒラヒラと手を揺らしながら否定の意を示す。


マリはお湯を沸かしながら言葉を続けた。


「それもそうね。だけど最近この辺りで子供の誘拐が頻発してるそうよ。さっきフロントの受付の人が話してた」


「へぇ、治安維持隊はなにしてんだかなぁ」


「あちらの本職は魔物の討伐だからね。誘拐事件にまで手が回らないのかも」
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