忘却の勇者
コーズとマリをベッドに寝かし、なにか飲み物を買おうと宿の外に出た。
しかしもうすでに時計の短針は十二時をとっくに過ぎている。
夜遅くでもやっている店を探し歩いて裏路地に入った瞬間であった。
背後から謎の手が襲いかかる。
口元に白い布のようなものを当たられた。
薬品独特の嫌な匂いが鼻孔をくすぐる。
強い匂い。おそらく催眠薬でも染み込んでいるのだろう。
けれど勇者体質のオレオには、薬物の類はほとんど効かない。
オレオは背後に立つ人物に肘鉄を喰らわせると、痛みで緩んだ腕を簡単にすり抜けて腰の黒刀に手を伸ばした。
刹那、背中に鋭い痛みが走った。
一瞬感じたチクリとした痛み。オレオは背後に目を向けようとしたが、視界がぼやけて意識が朦朧としていく。
オレオは気を失いその場に倒れた。