忘却の勇者
間近にある男の顔。
オレオは男の顔のある一点に目を奪われた。
そして納得する。なぜ自分の正体がバレたのか。
「赤銅の瞳……貴様“魔物憑き”か!」
男の瞳は濃い赤銅の赤。
魔物憑きに見られる身体的特徴の一つである。
人間に自らの魂を憑依させた魔物。それを魔物憑きという。
以前オレオが戦った夢悪の精神支配の魔法に似ているが、魔物憑きは憑依した人間に完全に成り替わる。
言わば完全支配。一度憑依されれば最後、その身体は魔物の入れ物となり、人としての自我や人格などは全て消去されてしまう。
だがこの人物は他の魔物憑きとは一線を引いていた。
魔物憑きに囚われた人間は欲求の赴くままに行動をする。
一言で表すならば下等生物。知的な行動など出来ぬはず。