忘却の勇者

いずれにせよ、かなりの強者であることは間違いない。


どんな危険があるかわからない。


コーズが一人で行くつもりだったが、マリが「二日酔いの人に行かせるわけにはいかない」と言い張り一緒に付いてきてしまった。


二人の前に現れた白いYシャツ姿の男。


コーズは小声でマリに囁く。


「今からでも遅くない。宿に戻れ」


「嫌よ。私だってオレオを助けたいの」


「強い女は男に逃げられるぞ」


「弱い男は願い下げよ」


コーズは足のナイフに手を伸ばし、マリは指輪型の魔具に魔力を注ぐ。


男は一歩一歩近づく。


コツコツと足音が妙に耳に届く。
< 155 / 581 >

この作品をシェア

pagetop