忘却の勇者
いずれにせよ、かなりの強者であることは間違いない。
どんな危険があるかわからない。
コーズが一人で行くつもりだったが、マリが「二日酔いの人に行かせるわけにはいかない」と言い張り一緒に付いてきてしまった。
二人の前に現れた白いYシャツ姿の男。
コーズは小声でマリに囁く。
「今からでも遅くない。宿に戻れ」
「嫌よ。私だってオレオを助けたいの」
「強い女は男に逃げられるぞ」
「弱い男は願い下げよ」
コーズは足のナイフに手を伸ばし、マリは指輪型の魔具に魔力を注ぐ。
男は一歩一歩近づく。
コツコツと足音が妙に耳に届く。