忘却の勇者
同時に魔物の特有の邪悪な魔力を、マリは瞬時に感じ取った。
「コーズ、こいつ人間じゃ」
刹那、男の腕が伸びた。
到底人間では出来ぬ芸当。言葉の続きは首元を押えられて封じられた。
「マリ!」
ナイフを引き抜き、マリの首を絞める腕に突き立てる。
が、刺さる寸前に腕を引き戻しそれをかわした。
開口した気道。肺が一気に酸素を取り込み、その場に座り込みながら咳き込みマリ。
コーズは刺し損ねたナイフを男目がけて投げつけたが、カキンという金属同士がぶつかる甲高い音を奏で、ナイフは男に当たることはなく地面にへと突き刺さった。
両刀の剣。よく見ると一本だけではない。
両手に一本ずつ。腰の左右に三本ずつ、内四つは鞘に収まっている。
さらにサスペンダーを器用に使い、背中に四本の刀を携えている。