忘却の勇者
計十本。一人が使うには多すぎる数である。
「まさかこいつ“灼銅の魔人”か……!」
「ゲホッ。しゃ、灼銅の魔人?」
「嗚呼。魔物に魂を売った元騎士団団員。十刀流の使い手でクレイジーな殺人鬼だ」
王都で起こった連続殺人事件。
その犯人がこの男。灼銅の魔人と恐れられた元騎士団団員・十刀流のイクト。
十本の剣を巧みに扱った戦術で数々の戦歴を挙げたエリート兵士。
騎士団の中でも一位二位を争う剣術の使い手であったが、現在は国に指名手配された凶悪犯に成り下がっている。
「その二つ名を聞くのを久しぶりだな。私も有名になったものだ」
「黙れ。オレオをどこにやった」
「私に勝ったら教えてやるさ!」
砂利を蹴る音。決闘の合図。