忘却の勇者
生死にかかわる一大事をすり抜けて且つこんなに和やかに言えるオレオは、かなりのやり手なのだろうと店の主人は第六感で感じとった。
見た目はどう見ても子供だけど。
「あ、そうだ。食事代を払らわないと。いくらですか?」
「え、いいよ別に。お金が欲しくてオレオを助けたわけじゃないんだし。ね、店長」
マリの言葉に主人は頷いた。
人助けに理由などいらないのだ。
だがそれではオレオの気が治まらない。
命の恩人でもあるマリと主人にどうしても恩返しがしたいのだ。
オレオは考えて、一つの提案を持ちかけた。
「じゃあ、今日一日このお店で働きます! 呼び込みでも雑用でもなんでも言ってください!」
この発言に真っ先に反応したのはマリ。
ではなく、意外にも店の主人だった。