忘却の勇者

薬を打つたびに抵抗してきたオレオだったが、今回は少し様子が違う。


まさか打ちすぎて死んじまったか? それともいたぶり過ぎて死んだのか?


致死量を遥かに超える量を、三十分置きに打たれ続けていたのだ。


おまけに動けぬ身体に鞭打たれ、本来ならば生きていること事態がありえない。


「生きていれば何をしてもよい」と言われていた男達だが、オレオが死んでしまっては元もこうもない。


男達の仕事はオレオの監視。監視対象者が死んでしまったら、自分たちがどのような制裁を加えられるか……。


背中に冷たいものが落ちていく。


慌てた男達は残りの仲間たちを呼び集め、その内一人がオレオに近づき頬を軽く叩いた。


「おい、生きてるよな糞餓鬼」


男の声に反応したのか、オレオの瞼がゆっくりと持ち上がった。


ホッと胸を撫で下ろす男達。


オレオは虚ろな眼で、周りの様子を伺う。

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