忘却の勇者

「俺たちはただ、あの男に金で買われただけだ。お前を誘拐して監禁した目的も知られていないし、それ以降の指示もされていない。本当だ!」


「あの男は何者だ」


「イクトさんのことか? あの人は元王国騎士団の団員。通称十刀流のイクト。赤銅の魔人と言ったほうが伝わるか?」


「赤銅の魔人……そうか、あの人が噂の連続殺人鬼」


赤銅の魔人の噂は、オレオの耳にも届いていた。


それもそうだろう。


彼は全国に指名手配中の凶悪犯。知らないほうがおかしいぐらいだ。


「そいつは今どこにいる」


「さ、さあな。どっかに出掛けたきりでまだ帰ってきてねえ」


僕を置いて外出? 一体どこへ?


イクトがどういった理由でオレオを拉致したのかはわからぬが、どうせロクなことではないことは確かだ。

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