忘却の勇者
魔物憑きの力を持ってしても崩せない強固な光の牢獄を作り上げたのは、頃合いを見計らっていたマリであった。
「危なかったね。怪我はない?」
「なんとかな。身代わり人形君がなかったら、確実にあの世逝きだったぜ」
苦笑い。実はかなりの大ピンチだったコーズである。
「だけど無事で良かった。で、あれはどうする?」
視線の先を辿っていくと、鬼の形相で光の壁を殴り続けるイクトが視界に写った。
拳は傷つき壁に血糊が付着している。
なにやら叫んでいるようだが、六角錠牢は防音機能も多少なり付属しているので、なにを言っているのかは聞き取れない。
けれど誰が見ても、現在進行形でマジギレ暴走中であることは明白である。
「あの調子じゃあ、オレオの居場所を聞き出せねえよなぁ」
「とりあえず討伐隊に引き渡す? 六角錠牢もそう長くは展開できないし」
「うーん、どうすっかな。それにしても」