忘却の勇者
困ったな。どうしよう。
今度はこちらが眉間を寄せる番になってしまった。
次の言葉を考えていると、沈黙を貫いていた少年が口を開いた。
「もしかして……勇者様?」
「え? ど、どうしてそう思うの?」
「やっぱりそうだ! 勇者様なんだね!」
怪訝な顔つきは一瞬にして満面の笑みに移り変わる。
ガバッとオレオに抱きつく少年。
あまりにも突然のこと過ぎて、オレオは少年の突進をモロに受けてそのまま後ろに倒れこむ。
混乱しているのはオレオだけではなく、その様子を見守っていたコーズとマリも、頭上に疑問符を浮かべていた。
三人の頭の中は、今見事に一致している。
―――な、なんだこの子?