忘却の勇者
彼が驚いたのは、なにも老人の存在感に怖気づいたからではない。
その老人は、社会事情に疎いオレオでさえも知っている人物であったからだ。
「まさか……アモス賢者ですか?」
老人の名はアモス。
七名の賢者の一人であり、元四聖官。
十年前に四聖官を引退し、その後は消息が断たれていたのだが……。
「とりあえず上がりなさい。勇者とそのお仲間さん」
少年は自分の背丈よりもやや大きい車椅子を引き、奥に下がる。
オレオはゆっくり立ち上がると、コーズとマリに目配せして後に続いた。
間違いない。あの人が東の賢者だ。
期待と確信。
三人は後に続くと、大きな丸テーブルが置かれたリビングに案内された。