忘却の勇者
どうやら口は相当悪いようです。
「どうして僕が勇者だってわかったの?」
「はいっ! オレオ様に会った瞬間に勇者様だってわかりました。あの時の勇者様と同じ魔力を感じたので」
そしてオレオには敬意を抱いているようです。
つまらなそうにしているコーズやどういう反応をすればいいか困っているオレオを尻目に、マリは一人だけレインの言葉に引っ掛かりを覚えた。
レインが言ったさりげない言葉。
「あの時の勇者様と同じ魔力を感じた」
まだ十歳かそこらの少年がオレオの魔力を感知した。
それだけでも十分驚くべきことなのだが、この際これは対した問題ではない。
この少年がなぜ元四聖官であるアモス賢者と暮らしているのかは定かではないが、魔術を極めた賢者と共に生活している以上、彼にはある程度魔術の心得があっても不思議ではない。
問題は「あの時の勇者」という所だ。