忘却の勇者

「せめて儂の全力で、その身体を清めてやろう」


それが若き青年の道標となることが出来なかったせめてもの情け。


ページを捲る。


羊皮紙に書かれた文字を指でなぞりながら、アモスは魔力を禁書に注ぐ。


禁書の存在は極一部の者しか知られていないが、少なくともあれが魔法書であることは明白である。


イクトも例外ではなく、禁書から溢れ出る並みならぬ魔力とプレッシャーを感じ取っていた。


彼からしたらただの古びた魔法書にしか見えないが、戦士としての直感が彼を前へ駆けださせた。


術の発動を潰す。


戦士が魔術師と戦う場合の極一般的な戦術だ。


強力な魔法であればあるほど、発動までのタメが大きくなる。


ただでさえ相手は賢者の称号を持つ元四聖官。
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