忘却の勇者
片手で防ぎきるのは難しいが、相手は空中。先ほどの足払いなどはもう出来ない。
今度こそ仕留める。
イクトは腰の鞘から剣を抜こうとしたが、引きぬくことができない。
なんだ?
視線だけ腰に向けると、柄と鞘の接触面が凍りついて抜き差し出来ぬようになっている。
こいつ、いつの間に氷結魔法を……。
無理やり引きぬこうと力を込める。
メキメキと氷にヒビが入り氷結面は破壊されたが、抜き切る前にレインの蹴りが顔面に命中した。
ツーと鼻に温かいものが流れる。
オカシイ。絶対にありえない。
手の甲で乱暴に拭いながら、自分と互角に対峙する少年に疑念を抱く。
レインが魔法を使うことに関しては対した問題ではない。