忘却の勇者
問題は自分と競り合うあの力。
パワーもスピードも剣術も、イクトのが方が何枚も上手のはずだ。
咄嗟の判断や魔法の使いどころなどは称賛に値するが、フィジカル面のポテンショルはどう考えてもオカシイ。
まさかこのガキ、肉体強化の魔法を……。
魔物の力を瞳に集める。
目を凝らしてレインを凝視すると、少年の身体から薄黄緑のオーラが漂っているのを確認した。
イクトの思った通り、レインの身体には肉体強化の魔法がかけられている。
体格差はどうあらがっても敵わない。その絶対的な差を、魔法によって補っているのだ。
そしてその魔法をかけた人物こそ、今レインの遠い後ろで魔力を練っているその人。
―――通りで底上げの次元が違うわけだ。
モタモタしていたら自分の首を絞めるだけ。
賢者が放つ魔法をまともに喰らえば、いくらイクトといえどもただでは済まない。