忘却の勇者
締め付けはさらに強くなる。
終いだ。
勝利の確信。けれど時間が掛かり過ぎた。
「レイン!」
大声を上げたのは、ずっと魔力を練っていたアモス。
思わずアモスへ視線を移す。
なにも変わっていない情景。車椅子に乗った老父が古びた本を持っているだけ。
けれど、大きな変化がそこにある。
イクトは焦る。遅かった、と。
僅かな動揺。
視界から自分の姿が外れていることを確認したレインは、空中に鋭い氷柱を作りだすと、氷柱は重力に従い落下する。
氷柱はイクトの腕に突き刺さると、思わぬ反撃にあったイクトは反射的に手を離してしまった。